歯科矯正は自由診療になるケースが多いため、子供の歯科矯正の際に補助金の対象になるのか気になる方もいますよね。
ごく一部のケースでは保険適用で治療が受けられますが、歯科矯正は基本的に保険が適用されません。
保険適用の有無や負担を軽減する方法について事前に確認することが大切です。
この記事では、子供の歯科矯正で使用できる制度や、かかる費用の内訳、支払いの負担を軽減する工夫などについて解説します。
目次
■子供の歯科矯正は補助金の対象になる?

歯科矯正では、補助金として国や自治体から助成を受けられるケースは少ないです。
しかし、条件に当てはまっている場合は、以下の制度によって治療費の負担を軽減できる可能性があります。
- 乳幼児医療費助成制度
- 医療費控除
- 高額療養費制度
それぞれの制度と受けられる条件について詳しく解説します。
乳幼児医療費助成制度
乳幼児医療費助成制度とは、乳幼児が医療機関を受診した際の治療費や薬代などの自己負担分の支払いを自治体が助成する制度です。
対象となるのは、国民健康保険や健康保険など、各種医療保険が適用される費用で、歯科矯正が保険適用で受けられた場合にのみ受けられます。
具体的な内容は自治体によって異なるため、市役所や町村役場の担当窓口で詳細をご確認ください。
医療費控除
医療費控除とは、自分や家族が1年間に支払った医療費の合計が10万円を超えた場合に、支払った医療費の一部が控除される制度です。
咀嚼や発音の問題を改善するために、歯並びの治療が必要と医師が判断した場合は、医療費控除の対象となります。
支払った医療費の額や申告した人の所得によって還付額が異なり、控除を受けるためには、税務署で確定申告の手続きをする必要があります。控除額の上限は200万円です。
申告の際は、診断書や領収書が必要になる場合があるため、事前の準備や下調べが大切です。
高額療養費制度
高額療養費制度は、1ヶ月(その月の1日から終わりまで)にかかった医療費が自己負担上限額を超えた際に、超過分の払い戻しを受けられる制度です。
保険適用で受けた歯科矯正に対してのみ適用され、利用のためには公的医療保険に加入していることが条件です。
限度額は年齢や所得によって定められ、その他に支給を受けられる条件もあります。
■子供の歯科矯正における保険適用の条件

子供の歯科矯正は、条件によって保険適用の有無が異なります。
ここからは、子供の歯科矯正で保険が適用されるケースと適用されないケースについて解説します。
保険が適用されるケース
子供の歯科矯正で保険が適用される例は、以下の通りです。
- 生まれつき顎や口の骨格に異常がある
- 厚生労働大臣に定められている特定の疾患がある
- 永久歯が3本以上生えてこず、外科手術が必要
子供の歯科矯正は、疾患や先天的な要因によって治療が必要だと判断された場合に保険が適用されます。
また、令和6年度診療報酬改定により、学校の歯科健診で「要精密検査」となった場合は、歯科医院での相談・診断を保険適用で受けられるようになっています。
保険が適用されないケース
上記の「保険が適用されるケース」に当てはまらない場合は、子供・大人に関わらず保険が適用されません。
小児矯正における保険適用の有無の判断には、歯科医師による評価が不可欠なため、必ず事前に確認しましょう。
■子供の歯科矯正で保険が適用される症例

子供の歯科矯正では、以下の疾患がある場合は基本的に保険が適用されます。
- 顎変形症
- 唇顎口蓋裂
- ダウン症候群
- 筋ジストロフィー
- 永久歯の萌出不全
ここからは、子供の歯科矯正で保険が適用される疾患の一例を紹介します。
顎変形症
顎変形症は、上顎と下顎の大きさや骨の形の異常によって噛み合わせのバランスが大きく乱れ、顔面が歪んで非対称になる疾患です。
咀嚼や発声への影響に加え、下顎が小さいケースでは気道が狭いことが原因で睡眠時無呼吸症候群を引き起こす恐れもあります。
歯の移動に加えて外科手術が必要と判断された場合に、手術前後の歯科矯正と骨を切る・動かすなどの処置にかかる費用に対して保険が適用されます。
子供の顎変形症は、軽度であれば歯科矯正のみで治せる可能性があり、外科手術を伴わないケースでは基本的に保険が適用されません。
唇顎口蓋裂
唇顎口蓋裂は顔面にみられる先天奇形のひとつで、唇や上顎の形成に異常があり、亀裂が生じる疾患です。
審美面への影響のほか、咀嚼障害や発音障害などの問題も起こる可能性があります。
子供のうちに上顎骨の成長を前方に促進して骨の欠損を補い、そのあとに歯科矯正で歯のない部分を補綴する治療を行います。
裂け目がある箇所によって、口唇裂・口蓋裂・唇顎口蓋裂などに分けられ、それぞれ保険適用の対象です。
ダウン症候群
ダウン症候群とは、本来は2本であるはずの21番染色体が3本あることで生じる、先天的な染色体異常症のひとつです。
知的障害や心臓・消化器・目・耳などの疾患を合併しやすく、歯科的な問題としては以下の特徴が挙げられます。
- 受け口(反対咬合・下顎前突)
- 舌が大きい
- 歯周病リスクが高い
- 歯の生え変わりが遅い
- 永久歯の数が少ない
- 歯の形の異常(歯が小さい・歯根が短いなど)
- 口蓋(口の天井)が狭い
口周りや舌の筋肉が弱く、ポカン口や睡眠時無呼吸症候群を引き起こしやすいとされています。
ダウン症による歯並びや噛み合わせの異常を改善するための治療には保険が適用されますが、本人からの理解を得るのが難しく、首の骨が不安定なケースが多いため、配慮した処置や家族の協力が必要です。
筋ジストロフィー
筋ジストロフィーは、遺伝子の変異によって筋肉が次第に弱くなる遺伝性筋疾患で、国による指定難病のひとつです。
舌の肥大化・萎縮や高口蓋(上顎の天井部分がドーム状に深く高くなる状態)が起こる場合があります。
歯並びや噛み合わせの異常が生じるケースが多く、歯列不正や開咬の治療が保険適用で可能です。
永久歯の萌出不全
永久歯の萌出不全は、本来乳歯が抜けて永久歯が生えてくる時期を過ぎても、歯が歯茎や骨に埋まって生えてこない状態です。
また、なんらかの原因によって先天的に永久歯の数が足りない「先天性欠如」と呼ばれる状態のケースもあります。
永久歯の萌出不全が起こる原因としては、歯茎が厚い、乳歯の虫歯や外傷、永久歯が生えてくるスペースが足りないなどが考えられます。
保険適用になるのは、以下の条件に当てはまるケースです。
- 永久歯の前歯・小臼歯が3本以上生えないことで噛み合わせに問題が生じている
- 厚生労働大臣が定める疾患または顎変形症に起因している
永久歯の萌出不全の場合は、埋伏歯(歯茎に埋まって出てこない歯)が生えるための歯茎の切開や、機能回復のために歯根と歯槽骨が癒着している際の脱臼処置が必要なケースで保険が適用されます。
■子供の歯科矯正にかかる費用

子供の歯科矯正では、以下の内訳のようにさまざまな費用がかかります。
- 初診料・診断料・検査料
- 矯正装置の費用
- 調整料・通院料
- 保定にかかる費用
それぞれの項目について解説します。
初診料・診断料・検査料
歯科矯正ではまず、初回の診察と診断、検査に費用がかかります。
初診では、口腔状態や歯並びのチェック、レントゲンや口腔内の写真撮影、型取りなどを行い、治療方針を決定します。
治療期間や費用、リスクなどの不安点がある場合は、カウンセリングの時点で相談しておきましょう。
矯正治療では、矯正装置や受診時に支払う費用のほうが印象が強いかもしれませんが、初診では検査を含めて数万円かかるケースもあるため、見落とさないように注意が必要です。
矯正装置の費用
子供の歯科矯正にはさまざまな矯正装置が用いられ、種類によって費用が異なります。
特に、Ⅱ期治療で使用されるインビザラインやブラケットなどの矯正装置は高額になりやすいです。
矯正装置にはそれぞれメリットとデメリットがあり、治療の目的や歯並び、ライフスタイルに合わせたものを選択するのが望ましいため、費用だけで選ばず総合的に判断するのが推奨されます。
調整料・通院料
歯科矯正中は、矯正装置の調整やメンテナンスで通院するため、その分費用もかかります。
矯正装置は、歯の動きに合わせて交換したり、かかる負荷が変わるように調整したりする必要があります。
治療期間が長引くと計画通りに歯が動かず、通院も多くなるため、かかる費用が大きくなりやすいです。
また、治療中は虫歯のリスクが高まるため、口腔状態を定期的に観察する必要があり、虫歯が発見された場合は一旦治療を中断しなければいけない可能性があります。
通院は費用がかかりますが、衛生状態のチェックやクリーニングによって虫歯を防ぎ、無駄な出費を防ぐために大切です。
保定にかかる費用
歯科矯正が完了したあとは、後戻りを防ぐために保定が必要になり、観察のための通院費や保定装置の費用などがかかります。
保定を行わずに歯が後戻りした場合、再び歯並びを整えるためには再治療が必要で、費用が余分にかかる可能性があります。
特に、子供の歯は大人よりも後戻りしやすく、1日保定装置の装着を怠っただけでも多少の後戻りが起こる恐れがあるため、装着時間を必ず守りましょう。
また、歯並びに影響する口腔習癖(指しゃぶり・舌癖・口呼吸)や頬杖、頬の片側でものを噛む癖などは、後戻りを助長する原因になるため注意が必要です。
■子供の歯科矯正で支払いの負担を軽減する方法

子供の歯科矯正では、以下の方法で支払いの負担を軽減することが可能です。
- Ⅰ期治療から開始する
- 複数の歯科医院の費用を比較する
- 分割払いを利用する
- 費用負担が少ない矯正方法を選択する
それぞれ詳しく解説します。
Ⅰ期治療から開始する
子供の歯科矯正をⅠ期治療から始めると、総合的な治療費の負担の軽減につながります。
顎の骨が成長段階にあるうちに行う歯科矯正は、成長を利用して歯並びや土台を整えられるメリットがあります。
将来的な抜歯のリスクを回避したり、複雑な治療が不要になったりすることで治療の難易度が下がり、お子さんへの負担も少なく済みやすいです。
また、Ⅰ期治療で使用される矯正装置は、Ⅱ期治療の矯正装置よりも比較的費用が安いため、Ⅰ期治療で完了すれば矯正装置の費用負担も軽減できます。
ただし、乳歯が抜けきっていない段階や、成長とともに改善される可能性がある軽度の歯並びの乱れは様子を見てもいいケースもあります。
治療を開始するタイミングの自己判断は難しいため、一度歯科医師に相談してみましょう。
複数の歯科医院の費用を比較する
自由診療で歯科矯正を受ける場合は、複数の歯科医院の費用を比較しましょう。
実際にカウンセリングを受け、矯正装置の費用や調整料など、全て込みの金額を確認することが大切です。
ただし、費用だけに注目せず、通院の利便性や予約の取りやすさなどを総合的に判断することをおすすめします。
分割払いを利用する
分割払いを選択すると、高額だと感じる歯科矯正の支払いでも、毎回の出費を抑えることが可能です。
クレジット支払いは手数料がかかるため、自由診療の歯科矯正の場合は手数料が抑えやすいデンタルローンの利用がおすすめです。
歯科医院で対応する分割払いは手数料がかからないケースが多いですが、分割払いを取り扱っていない歯科医院もあるため注意しましょう。
費用負担が少ない矯正方法を選択する
部分矯正を選択する、費用負担が少ない矯正装置を選択するなどの方法で費用を抑えられる場合もあります。
ただし、口腔状態や目的によって適切な治療を受けることを優先しましょう。
例えば、マウスピース矯正とワイヤー矯正では費用相場が異なりますが、重度の歯並びの乱れがある場合は、マウスピース矯正では対応できない可能性があります。
また、矯正装置の見た目や着け心地によってお子さんが治療を嫌がるケースもあるため、費用面を考慮しつつお子さんの意思を尊重してあげることが大切です。
■まとめ
歯科矯正は、子供のうちに受けることでさまざまなメリットがありますが、費用が高額になりやすいため、治療を躊躇してしまう場合もあるでしょう。
原則として歯科矯正は子供の場合でも自由診療となり、保険適用となるのは限られたごく一部のケースのみです。
しかし、子供の歯科矯正は将来の歯を健康に保つことにつながるため、費用面でお悩みの方には、支払いの負担を軽減する工夫がおすすめです。
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