歯列矯正と肌荒れはまったく関係がないとお考えかも知れませんが、実は歯列矯正中の肌荒れに悩む人は多くいるのです。
この記事では、歯列矯正中の肌荒れについて、その意外な原因と対策・対処法について詳しく解説しています。
本記事を読めば、歯列矯正と美容の両立を図り、より美しい自分自身を手に入れられるでしょう。
歯列矯正中に肌荒れが起こる原因と対策・対処法
歯列矯正中に肌荒れが起こる原因は金属アレルギーが考えられる
歯列矯正中に起こる肌荒れの原因のひとつは、金属アレルギーだと考えられます。
金属アレルギーは、日本国内でも10人に1人が発症しているとされるほど一般的な疾患で、患者は増加傾向にあります。
日本国内に1000万人の患者(予備軍含む)がいるといわれているだけでなく、世界でもっとも患者数の多いアレルギーなのです。
金属アレルギーが起こる理由
歯科領域における金属アレルギーでは、口内にある銀歯や詰め物、矯正装置などの金属が原因となりアレルギー反応が生じます。
唾液によってイオン化して溶け出した金属が体内に吸収されると、抗原と呼ばれるアレルギーの原因物質となります。
これに対して、体のなかにある細胞が炎症物質を作り出してしまうのです。
歯科領域における金属アレルギーは、4つに分類されるアレルギー反応のうち、Ⅳ型に該当します。
Ⅳ型アレルギーは、抗原が抗体と反応してからおよそ24〜72時間後に症状が出ることが多く、遅延型アレルギーとも呼ばれています。
もともと金属アレルギーを持たない人でも、蓄積された金属によって突然発症する恐れもあるのです。
金属アレルギーの症状
歯科領域における金属アレルギーでは、唾液に溶け出した金属成分が全身に運ばれるため、口内だけでなく全身のあらゆる部位に症状がみられる傾向にあります。そのような全身型金属アレルギーの症状には、以下のようなものがあります。
- 口内炎、舌炎
- 口唇炎、口角炎
- めまい、頭痛、肩こり
- 偽アトピー性皮膚炎
- 掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)
舌や唇、口角が赤く腫れる・ただれる・切れるといった症状が見られます。
また、めまいや頭痛、肩こりなども金属アレルギーの症状として現れる場合があります。
偽アトピー性皮膚炎とは、全身のさまざまな場所に発疹が出るアトピー性皮膚炎に類似した症状のことです。
掌蹠膿疱症とは、手のひら・足の裏などに水ぶくれができる病気のことをいいます。
痛みやかゆみをともなう傾向があり、症状が何度も繰り返されるのが特徴です。
金属アレルギーを起こしやすい・起こしにくい素材
金属には、金属アレルギーを起こしやすい素材と、起こしにくいとされる素材があります。金属アレルギーを起こしやすいのは、イオン化傾向が高い素材です。
- ニッケル
- コバルト
- スズ
- パラジウム
- クロム
などが該当します。
このうち、ニッケルやクロムはワイヤー矯正のブラケットに、パラジウムは銀歯に使われることが多いです。
一方で金属アレルギーを起こしにくいのは、
- 金
- 白金
- チタン
などです。
このなかでも、特にチタンが金属アレルギーを起こしにくいとされています。
チタンは空気に触れるとすぐに酸化し、表面に酸化被膜を作ります。
この酸化被膜によってチタンは唾液に溶け出すことが少なく、金属アレルギーを引き起こしにくいのです。
チタンは歯科だけでなく医科でも広く使用されている信頼性の高い素材です。
ただし、あくまでも金属アレルギーを起こしにくい素材であり、発症リスクがまったくないわけではないことを知っておきましょう。
金属アレルギーの対策と対処法
歯科領域における金属アレルギーに対して、どのような対策や対処法がとれるのでしょうか?ここでは以下の3つを取り上げます。
- パッチテストの実施
- メタルフリー素材の使用
- マウスピース矯正への切替
それでは詳しく解説していきます。
パッチテストの実施
パッチテストとは、金属アレルギーや接触皮膚炎などの原因となる物質を特定するためにおこなう検査です。皮膚アレルギー試験ともいいます。
原因と考えられる物質を背中や腕などの皮膚に貼付し、反応を観察します。
結果の判定までに2〜3日程度必要です。
パッチテストは通常皮膚科でおこないます。
ご希望の方は、かかりつけの歯科医に相談してみましょう。
皮膚科への紹介状をもらえる場合があります。
歯列矯正を検討中の方は、事前にパッチテストを受けておくと安心ですね。
メタルフリー素材の使用
メタルフリー素材とは、名前のとおり金属を含まない素材のことです。ワイヤー矯正であれば、金属を含まないセラミックブラケット、またはアレルギー発症リスクが低いチタン製のブラケットを選びましょう。
特にセラミックは、天然の歯に近い色味のため金属に比べて目立たないことが特徴です。
保険適用外のため料金はやや高額になってしまいますが、安全性と審美性を兼ね備えた歯列矯正をご希望の方にはおすすめの素材です。
マウスピース矯正への切替
パッチテストでチタンにも反応することがわかった方、パッチテストをおこなわず歯列矯正中に金属アレルギーを発症した方には、マウスピース矯正をおすすめします。マウスピース矯正で使用するアライナーは、プラスチックの一種であるポリウレタンで作られている場合がほとんどです。
ポリウレタンは洋服やマスクなどにも使われている身近な素材で、軽くて弾力があるのが特徴です。
金属を一切含まないため、金属アレルギーの心配はありません。
ただし、マウスピース矯正にもデメリットはあります。
マウスピース矯正を選ぶ場合は、歯科医とよく相談してから決めるようにしてください。
まとめ
以上、歯列矯正中に肌荒れが起こる原因と、その対策・対処法をお伝えしました。歯列矯正中に肌が荒れる原因として考えられることのひとつは金属アレルギーです。
金属アレルギーは、素材によって症状を引き起こす確率が異なります。
ご自身が金属アレルギーをお持ちかどうかわからない方は、事前にパッチテストをおこないましょう。
金属アレルギーをお持ちの場合は、できるだけ発症リスクの低い素材を利用することで、トラブルなく治療を終えられる確率が高まります。
治療中に金属アレルギーが発症した場合は、速やかに歯科医に相談し、適切な対処をおこないましょう。
メタルフリーの矯正装置に切り替えられる場合があります。
歯列矯正によって美しい口元を手に入れ、より充実した生活を送れると良いですね。