
過蓋咬合(かがいこうごう)という歯並びがあるのをご存じでしょうか?
専門用語で難しいですが、深い噛み合わせのことを指し、歯列矯正の難易度が高い傾向がある歯並びです。
過蓋咬合に悩んでいる方も多く、歯列矯正をせずに放置すると、さまざまなリスクを伴います。
この記事では、過蓋咬合の矯正方法やリスク、さまざまな疑問について詳しく解説します。
過蓋咬合の矯正を考えている方や、疑問や不安がある方は、ぜひ参考にしてください。
目次
■過蓋咬合(かがいこうごう)とは
過蓋咬合とは、ディープバイトとも呼ばれ、上下の前歯の重なりが大きく、深い噛み合わせになっている状態のことです。
正面から見ると、上の前歯で下の前歯が隠れるほど被さっていたり、上の前歯が下の歯茎に当たったりすることもあります。
過蓋咬合の症状
通常の歯並びであれば、口を閉じると上下の前歯同士の重なりは2~3㎜程度ですが、過蓋咬合の場合はそれ以上に深く重なってしまう状態です。
過蓋咬合はしっかり口を閉じた状態で上下の歯が重なり合うため、見た目でわかってしまい、悩んでいる方も少なくありません。
噛み合わせだけでなく歯がガタガタに並んでいる叢生(そうせい)や、出っ歯や受け口など、他の歯列不正が同時に現れているケースも多く、歯列矯正が難しくなる傾向があります。
前歯がずれていて食べ物が噛み切れなかったり、唇が閉じづらく口呼吸になりやすかったり、見た目だけでない影響が出てしまう可能性もあるため、噛み合わせが気になる場合は矯正歯科へ相談してみましょう。
過蓋咬合の原因
過蓋咬合になる原因には、さまざまな要因があると考えられています。
- 遺伝
- 顎の骨の形状
- 歯の欠損
- 悪癖 など
遺伝による歯の大きさや生え方、顎の発育への影響が過蓋咬合につながることもあります。
家族に過蓋咬合の方がいる場合は、遺伝する可能性があるため注意しましょう。
成長過程で顎の骨の発育バランスに異常があると、過蓋咬合になりやすくなります。
上顎と下顎のバランスが悪かったり、顎の関節の位置や形状が通常よりずれていたりすると、歯が深く噛み合ってしまうのです。
奥歯の欠損や、乳歯の早期脱落などで噛み合わせが悪くなることにより、過蓋咬合になってしまう可能性もあります。
また、歯ぎしりや食いしばり、指しゃぶり、口呼吸などの悪癖がある場合も注意が必要です。
顎の成長に影響したり、歯の生え方が変化したりして、過蓋咬合につながるケースがあります。
子どもの過蓋咬合
子どもの過蓋咬合は、骨が柔らかいうちに歯列矯正を始めることにより、予防や改善が期待できます。
噛み合わせの不具合によるさまざまな悪影響が出てくる前に、歯列矯正で過蓋咬合を治療して顎の成長を正しく導くことができるでしょう。
成長に合わせて顎の大きさや位置を調節し、永久歯がきちんと並ぶためのスペースを整えておけば、将来大人になったときにさらに歯列矯正が必要になったとしても、負担を減らせる可能性が高まります。
子どもの過蓋咬合の場合は、原因や症状によって異なりますが、成長に合わせて顎や歯並びを整える矯正器具の使用や、悪癖を改善するためのトレーニングを行うなどの方法を組み合わせて歯列矯正を行います。
大人の過蓋咬合
大人の場合は子どもとは治療方法が異なり、顎の成長を利用することはできないため、一般的な歯列矯正方法で歯を動かしたり、歯並びを整えたりする歯列矯正が行われます。
ワイヤー矯正やマウスピース矯正がありますが、症状の程度により選択できない可能性があります。
特に重度の過蓋咬合の場合、顎の骨格に問題があると外科手術をして噛み合わせを整えるケースもあり、歯列矯正と組み合わせて治療していくことになるでしょう。
また、後戻りを防ぐために、悪癖がある方は改善するトレーニングをするのがおすすめです。
■過蓋咬合をそのままにするリスク
過蓋咬合を治療せずに放置していると、見た目が気になるだけでなく、健康上のリスクにもなりかねません。
ここでは、過蓋咬合をそのままにした場合のリスクや悪影響について解説します。
顎関節症になりやすい
過蓋咬合は上下の前歯が深く噛み合うため、接触が強くなって顎に負担がかかり、顎関節症になりやすくなってしまいます。
また、上の前歯に圧迫されて下の顎の動きが制限され、口が開けづらくなったり、痛みが出てきたりする可能性があります。
歯列矯正をせずに過蓋咬合のまま長期間放置すると顎関節症になり、口を開けるたびに小さな異音がするようになるかもしれません。
口の開閉が困難になるほど痛みがあるケースもあるため、注意しましょう。
歯のトラブルが起こりやすい
過蓋咬合の場合、虫歯や歯周病、知覚過敏などの歯のトラブルが起こりやすくなります。
上下の前歯同士の重なりが深いと、唾液の循環がうまくいかなかったり、重なった部分の歯磨きが不十分になったりして、虫歯のリスクが高まるのです。
噛み合わせが悪いと噛もうとする力が強くなり、前歯に力をかけすぎてしまい、歯茎への負担も大きくなります。
徐々に歯茎が下がり、歯周病や知覚過敏に進行してしまうこともあるでしょう。
また、前歯が噛み合わないことで奥歯への負担が増えすぎた場合は、見えない奥歯で歯周病が発症してしまう可能性もあるため、定期的に歯科検診を受けるのがおすすめです。
歯・歯茎が傷ついてしまいやすい
過蓋咬合の深い噛み合わせは、上下の歯と歯が擦れて削れてしまう可能性があります。
この状態が長く続くと、歯のエナメル質が摩耗して歯が痩せてしまい、虫歯や歯周病だけでなく、歯が抜け落ちてしまうかもしれません。
また、特定の場所に歯が当たり続けることにより、口内炎ができてしまうケースも考えられます。
過蓋咬合を放置すると食事や日常生活にも影響が出てしまうため、歯列矯正がおすすめです。
ガミースマイルになる可能性がある
過蓋咬合の方は、ガミースマイルになる可能性が高いです。
ガミースマイルとは、笑ったときに上の前歯だけでなく歯茎までが見えてしまう状態のことで、これを気にして笑うのをためらってしまう方も少なくありません。
上顎の前歯が前方や下方向に伸びていると、ガミースマイルが目立つ場合があります。
ガミースマイルの原因が過蓋咬合だとは限りませんが、気になる方は矯正歯科へ相談しましょう。
補綴物(ほてつぶつ)に負担がかかる
過蓋咬合は上下の噛み合わせが強くなり、歯に強い力がかかりやすいため、補綴物(ほてつぶつ)に負担がかかりやすくなります。
補綴物とは、虫歯治療の被せ物や入れ歯、ブリッジ、インプラントなど、歯科治療で使用された人工物のことです。
特定の場所に負担がかかり続けると、その場所にある補綴物が破損しやすくなる可能性があります。
過蓋咬合を考慮して補綴物の調整をする方法もありますが、通常よりも歯を削って厚みのある補綴物を使用しなければなりません。
長く自分の歯を使っていくためにも、歯列矯正による過蓋咬合治療をするのがおすすめです。
噛み合わせの異常による影響がある
過蓋咬合の噛み合わせの異常により、全身の健康に影響を及ぼす可能性があります。
顎のズレによって筋肉が緊張して頭痛や肩こりが起こる可能性や、食べ物を十分に噛み切れないことで胃腸に負担がかかるケースもあります。
下顎が出ているタイプの過蓋咬合では、姿勢に影響してさまざまな負担がかかってしまうこともあるため、注意が必要です。
また、症状の程度によっては舌の動きが制限されるくらいに歯が重なり合っていることもあり、特定の音が発音しづらかったり、口の開閉がしづらかったりして、活舌が悪くなってしまうこともあります。
特に子どもの場合は、成長期に影響が出てしまう前に、歯列矯正を始めるのが望ましいでしょう。
■過蓋咬合の歯列矯正方法
過蓋咬合の歯列矯正方法には、大きく分けてワイヤー矯正とマウスピース矯正、外科手術の3つがあります。
年齢や症状、顎の状態などを考慮して、歯列矯正の方法を選択するのが重要です。
過蓋咬合では、複数の方法を組み合わせた歯列矯正を行うこともあります。
ここでは、それぞれの方法を詳しく解説します。
ワイヤー(ブラケット)矯正
ワイヤー(ブラケット)矯正とは、歯に装着したブラケットにワイヤーをつなぎ、弾力を利用して歯を移動させる歯列矯正の方法です。
ワイヤー矯正は適応症例が多く、歯を大きく動かせて難しい症例にも対応できるため、過蓋咬合の歯列矯正にも多く使われています。
ワイヤー矯正で使用される矯正器具は、装着したら自分で取り外すことはできません。
調整直後は痛みを感じることもありますが、歯が動くスピードが早いため、期間が短く済むこともある方法です。
表側矯正の場合は目立ちやすくなりますが、セラミック製のブラケットや白いワイヤーもあります。
また、過蓋咬合の症状によっては裏側矯正ができるケースもあるため、相談してみましょう。
マウスピース矯正
マウスピース矯正は、専用の透明なマウスピースを装着して、歯を少しずつ動かしていく矯正方法です。
透明なマウスピースは目立ちにくいため、周りに歯列矯正をしていると気づかれにくくなります。
食事のたびに取り外して歯磨きをしたり、装着時間を守ったりする努力が必要になります。
ワイヤー矯正と比較すると、痛みは少ない傾向がある方法です。
症状によっては適用できない可能性もあるため、マウスピース矯正を希望している方は事前にクリニックへ相談しましょう。
外科手術
重度の過蓋咬合や、顎の骨に問題がある場合、外科手術になるケースもあります。
手術により骨格を改善することにより、噛み合わせの不具合を治療する目的です。
外科手術というと不安もあるかもしれませんが、短期間で改善がみられる場合もあるため、医師とよく相談して決めましょう。
また、外科手術を行うと同時に、他の歯列矯正方法を組み合わせて歯列矯正を行うこともあります。
■過蓋咬合の歯列矯正でよくある質問
過蓋咬合の歯列矯正を検討している方によくある疑問をまとめました。
人それぞれの症状や矯正歯科クリニックにより異なる部分もありますが、目安として参考にしてください。
費用はどれくらい?
過蓋咬合の歯列矯正費用の目安は、ワイヤー矯正は約60~80万円、マウスピース矯正は約80~100万円が目安です。
ワイヤー矯正でもセラミックブラケットや裏側矯正を選択したら、費用が高くなります。
大人と子どもでも差はあり、子どもの場合は費用が安くなる傾向がありますが、症状や期間により異なるため、カウンセリングで総額について確認しておきましょう。
他にも調整の通院費や、歯列矯正後に後戻りを防ぐためのリテーナー(保定装置)に別途料金がかかることもあります。
矯正方法の種類だけでなく、素材やクリニックによって費用が変動するため、事前にきちんと調べておきましょう。
保険は適用される?
過蓋咬合は、顎変形症などの特定の疾患に起因する場合や選的な疾患により噛み合わせに問題が生じている場合など、一定の条件を満たす症例に限り、保険適用が認められるケースがあります。
基本的に歯列矯正は保険適用外で自費診療となりますが、条件を満たせば保険適用となり一部の費用負担で済む可能性があります。
詳細な条件や手続きについては、厚生労働省のwebサイトや歯科医師に確認してください。
また、歯科医院により保険適用される歯列矯正が行えるかどうかも異なるため、事前の確認が必要です。
かかる期間は?
一般的に過蓋咬合の歯列矯正にかかる期間は、大人の場合は約2〜3年です。
後戻りを防ぐリテーナー(保定装置)の装着には、約1〜2年かかるでしょう。
マウスピース矯正の場合は、装着時間が守られているかによって治療期間に差が出てしまうため、目安の期間より長くかかる可能性もあります。
また、子どもの場合は年齢にもよりますが、永久歯への生え替わりの時期を待ったり、顎が成長する変化を確認したりするため、期間が長くなるかもしれません。
予防はできる?
過蓋咬合の予防は、子どもであれば日常生活の習慣を改善することで、ある程度の予防は可能です。
口周りの悪癖とされる、指しゃぶりや口呼吸、歯を舌で押すなどの習慣をなくすトレーニングをすれば、効果が期待できます。
ただし、過蓋咬合の原因が骨格的なものだと歯列矯正が必要になるため、歯並びや噛み合わせに違和感がある場合は、医師の診断を受けましょう。
また、噛み合わせが深くなりすぎないうちに矯正歯科を受診し、歯列矯正を始めることで、酷くなる前に治療することができます。
歯列矯正後はどうすればいい?
過蓋咬合の歯列矯正後は、後戻り防止のためにリテーナー(保定装置)の装着を忘れないようにしましょう。
動かした歯が戻ろうとする力を止めて、歯並びや噛み合わせを保持する役割があります。
続ける期間は、個人差がありますが約1~2年で、数ヶ月ごとに通院して口腔内の状態を確認します。
また、口周りの悪癖がある方は、改善するトレーニングをするのがおすすめです。
■まとめ
過蓋咬合は自然に治るものではなく、そのままにしておくとさまざまなリスクがあります。
見た目が気になる以外にも、全身の健康に関わる影響が出てしまうこともあるため、歯列矯正による治療をするのが重要です。
大人と子どもでは、費用や期間、治療方法も異なります。
どの方法を選択するかにより、クリニックが対応しているかも事前に確認しておく必要があります。
自分に適した方法を見つけ、過蓋咬合を治療することで、リスクを回避できる可能性が高まるでしょう。
名駅大森ピア歯科・矯正歯科では、一般歯科から矯正歯科まで、幅広く丁寧なカウンセリングを行い、不安や疑問などはわかりやすく説明することを心がけております。
マウスピース矯正(インビザライン)や裏側矯正にも対応しています。
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