
矯正治療中にブラケットが外れてしまうのは、決して珍しいことではありません。
しかし、適切な対処をしないと治療の進行に影響を与える可能性があります。この記事では、ブラケットが外れた時の応急処置方法や予防法、さらには治療への影響や費用面についても詳しく解説します。
ブラケットが外れた時の対処法から日常的な予防策まで、矯正治療を成功に導くためのポイントをしっかり押さえていきましょう。
目次
■矯正中にブラケットが外れた際の応急処置方法
ブラケットが外れた場合、まず落ち着いて状況を確認し、手順に沿って応急処置を行いましょう。
外れたブラケットをそのまま放置すると、治療の進行に影響を与える可能性があるため、迅速な対応が求められます。
ここでは、ブラケットが外れた場合の手順について解説します。
歯科医院への連絡
ブラケットが外れたことに気づいたら、まず担当の歯科医院に連絡を取りましょう。状況を詳しく説明し、適切な指示を仰ぐことが重要です。
外れたブラケットの位置や、口腔内に痛みや違和感があるかなどを伝えてください。歯科医院では、状況に応じて緊急の受診が必要か、次回の予約まで待てるかを判断します。
また、自宅での応急処置の方法についても具体的なアドバイスを受けられます。
休日や夜間の場合でも、多くの矯正歯科では緊急時の連絡先を提供しているため、躊躇せずに連絡を取りましょう。
矯正用ワックスで固定
歯科医院からの指示があれば、矯正用ワックスを使用し、以下の手順でブラケットを一時的に固定します。
- 外れたブラケットの周辺を清潔にし、水分や食べかすを取り除く
- ワックスを適量取り、指で丸めて柔らかくする
- ワックスをブラケットの上から優しく押し当て、ワイヤーとブラケットを覆うように固定する
ワックスは口腔内の湿気で徐々に溶けるため、必要に応じて交換しましょう。
ワックスでの処置は一時的なものであり、専門的な再装着の代わりにはなりませんが、口腔内の不快感を和らげ、ブラケットやワイヤーが粘膜を傷つけるのを防ぐ効果があります。
ワックスを使用しても違和感が強い場合は、無理に固定せず、歯科医院の指示に従ってください。
外れたブラケットを清潔に保管
ブラケットが完全に外れてしまった場合は、誤って飲み込まないよう注意し、捨てずに保管しましょう。
- 外れたブラケットを口から慎重に取り出す
- ブラケットを清潔な水で軽くすすぎ、付着した唾液や食べかすを取り除く
- 清潔な容器や小さなビニール袋に入れて保管する
ティッシュペーパーで包むと、紛失や誤って捨ててしまう可能性があるので避けましょう。保管する際は、ブラケットが変形したり破損したりしないよう、安全な場所に置いてください。
外れたブラケットは、次回の歯科受診時に持参することで、再利用できる可能性があります。
また、ブラケットの状態を歯科医が確認すると、外れた原因を特定でき、今後の対策を立てるのに役立ちます。
■ブラケットが外れたままだと矯正治療に悪影響が出る
ブラケットが外れたままだと、矯正治療に以下のような悪影響が出る可能性があります。
- 治療期間の延長
- 歯の移動の停滞
- 歯の後戻り
- 予期せぬ方向への歯の移動
- 口腔内のトラブル(粘膜の傷つきなど)
- 治療効果の低下
- 追加の治療や費用の発生
矯正装置は、それぞれの歯に適切な力を加えて、計画的に歯を移動させる仕組みですが、ブラケットが外れると、その繊細なバランスが崩れてしまいます。
外れたブラケットがある部分の歯は適切な力を受けられず、移動が止まったり、逆戻りしたりする可能性や、他の歯との力関係が変わることで、予期せぬ方向に歯が動いてしまう恐れもあります。
これらの問題は、治療期間の延長や、最終的な歯並びの仕上がりに影響を与えるだけでなく、外れたブラケットや露出したワイヤーが口腔内を傷つける危険性もあるため注意が必要です。
口腔内にできた傷は、単に不快なだけでなく、口内炎や感染のリスクを高める可能性があるため、ブラケットが外れた場合は速やかに歯科医院に連絡し、適切な処置を受けましょう。
■矯正中にブラケットが外れる主な5つの原因
矯正治療中にブラケットが外れることは珍しくありませんが、頻繁に外れる場合は治療の進行に支障をきたす可能性があります。ブラケットが外れる原因を理解し、適切な対策が必要です。
ここでは、ブラケットが外れる主な5つの原因を解説します。
歯が移動した
矯正治療が進むにつれて歯の位置が変化し、当初接着したブラケットの位置と歯の表面の関係が変わってきます。特に治療初期は歯の移動が顕著であり、この時期にブラケットが外れやすくなります。
歯の移動に伴い、ブラケットに加わる力の方向や強さが変化し、接着部分に過度の負担がかかったり、歯の表面の形状が変わったりすることで、ブラケットとの適合性が低下する可能性もあります。
このような理由でブラケットが外れた場合、単に再接着するだけでなく、歯の新しい位置に合わせてブラケットの位置を調整する必要がある場合もあります。
定期的な通院と歯科医師による適切な管理が重要です。
装置が外れやすい食事
ブラケットが外れる主要な原因の一つが食事の内容や食べ方です。
特に注意が必要なのは、硬い食べ物や粘着性の高い食品です。ブラケットに直接的な力を加えたり、接着部分に過度の負担をかけたりする可能性があります。
具体的には、固いパンの耳、ナッツ類、堅い野菜や果物(ニンジン、リンゴなど)、肉の骨付き部分などが挙げられます。また、キャラメルやグミなどの粘着性の高いお菓子も要注意です。
食品がブラケットに絡まったり、強い力で引っ張ったりすると、ブラケットが外れる可能性が高まります。
食いしばりや歯ぎしり
食いしばりや歯ぎしりは、ブラケットに予期せぬ力を加える原因となり、ブラケットが外れる原因の一つです。
多くの場合、無意識のうちに行われており、特に睡眠中に起こりやすいため、本人が気づいていないケースも少なくありません。
食いしばりや歯ぎしりによって、ブラケットには通常の咀嚼時よりもはるかに強い力が加わります。
繰り返し力が加わると、ブラケットと歯の接着部分に負担がかかり、徐々に接着力が弱まっていく可能性があります。
対策としては、就寝時にマウスピースを使用することが効果的です。マウスピースは歯ぎしりによる力を分散させ、ブラケットへの直接的な負担を軽減できるでしょう。
歯にフッ素塗布されている
歯にフッ素が塗布されている場合、ブラケットの接着力が低下する可能性があります。
フッ素は歯のエナメル質を強化し、虫歯予防に効果的ですが、同時に歯の表面を滑らかにする性質があり、ブラケットの接着を困難にする可能性があります。
特に、矯正治療直前にフッ素塗布を受けた場合や、日常的にフッ素入りの歯磨き粉を使用している場合に注意が必要です。
フッ素によって形成された保護膜が、接着剤の効果を妨げる可能性があるためです。
矯正治療を開始する前に、歯科医師にフッ素塗布の履歴を伝えましょう。必要に応じて、ブラケットを接着する前に特殊な処理を行うことで、接着力を高められます。
防湿・乾燥が不十分な場合
ブラケットの接着時に、防湿や乾燥処理が不十分な場合、接着力が低下し、ブラケットが外れやすくなります。
接着作業時には、歯の表面を完全に乾燥させ、唾液や水分の排除が必要です。この過程が不十分だと、接着剤と歯の表面の間に水分が残り、十分な接着力が得られません。
また、接着後も一定時間は湿気を避ける必要があります。
■矯正中にブラケットが外れにくくするための予防法
適切な予防策を講じると、矯正中にブラケットが外れてしまうリスクを大幅に軽減できます。ここでは、日常生活の中で簡単に実践できる予防法を解説します。
硬い食べ物や粘着性の高い食品を避ける
ブラケットを保護するため、柔らかい食材や粘着性の低い食材を中心に選びましょう。
野菜や果物は蒸す、煮る、ミキサーにかけるなどして柔らかくし、肉は骨付きを避け、ひき肉や薄切り肉を選択、魚は骨を丁寧に取り除きます。
パンは全体的に柔らかいものを。お菓子は硬いものや粘着性の高いものを避け、プリンやゼリーなどを選ぶと良いでしょう。
食べ方も重要で、小さく切って奥歯でゆっくり噛むようにしましょう。前歯で噛み切る動作は避けます。
食べ物の選択や食べ方の工夫により、ブラケットへの負担を軽減しつつ、バランスの取れた栄養摂取が可能になります。
丁寧に歯磨きをする
ブラケットやワイヤーの周りに食べかすが残りやすく、虫歯や歯周病のリスクが高まる可能性があるため、矯正治療中は通常以上に丁寧な歯磨きが必要です。
歯磨きの際は、柔らかめの歯ブラシを使用し、ブラケットの周りを丁寧に磨きましょう。特に、ブラケットの上下や、ワイヤーと歯の間の清掃が重要です。
歯ブラシを45度の角度で当て、小さな円を描くように磨くと効果的です。
また、通常の歯ブラシだけでなく、矯正用の歯間ブラシや、フロスなども併用することをおすすめします。
専用の道具を使用すると、ブラケットやワイヤーの隙間に入り込んだ食べかすも効果的に除去できます。歯磨き時間は、通常よりも長めに取り、1回3分以上を目安にしましょう。
舌や指で装置を触る癖を控える
矯正装置を装着すると、違和感から無意識のうちに舌や指で触ってしまう癖がつきやすくなります。しかし、ブラケットを外す原因となる可能性があるため注意が必要です。
舌や指で装置を触ると、ブラケットに不必要な力が加わり、接着部分に負担がかかります。特に、舌で装置を押したり、指で引っ張ったりする動作は避けましょう。
また、爪を噛む癖や、鉛筆を噛む癖なども、ブラケットを傷つけたり外れたりする原因となるため注意が必要です。
癖に気づいたら、すぐにやめるよう心がけて、代わりに深呼吸をしたり、水を飲んだりするなど、別の行動に置き換えるのも効果的です。
定期的にメンテナンスを受ける
矯正治療中は、定期的な歯科医院でのメンテナンスが不可欠です。通常4〜6週間ごとに行われ、矯正装置の状態チェックと調整が主な目的です。
ブラケットの接着状態やワイヤーの張り具合を確認し、必要に応じて再接着や調整を行い、ブラケットが外れるリスクを減らし、治療の進行を適切に管理できます。
また、口腔衛生状態のチェックも行われ、虫歯や歯周病の予防にも役立ちます。
定期的なメンテナンスでは、気になる点や不安な点を歯科医師に相談することも可能です。日常生活での注意点や効果的な口腔ケア方法についてのアドバイスも受けられます。
■ブラケットの再装着にかかる費用
ブラケットの再装着にかかる費用は、歯科医院によって異なりますが、多くの場合、無料で行われます。
ただし、患者さんの不注意や指示を守らなかったことが原因で外れた場合、追加料金が発生する可能性があります。例えば、硬い食べ物を噛んだり、装置を無理に外そうとしたりした場合です。
一部の歯科医院では、再装着に対して料金を設定していることもあり、1歯あたり3,300円程度の費用がかかるケースもあります。
また、マウスピース型矯正装置の場合、紛失や破損による再作製には別途費用が必要となります。
費用面で不安がある場合は、事前に担当医に確認すると良いでしょう。
■まとめ
矯正中にブラケットが外れた場合、歯科医院への連絡、矯正用ワックスでの固定、外れたブラケットの保管が基本的な応急処置です。
ブラケットが外れる原因には、歯の移動や食事、歯ぎしりなどがあります。予防法として、食事の工夫、丁寧な歯磨き、装置に触る癖を控えること、定期的なメンテナンスが効果的です。
名駅大森ピア歯科・矯正歯科では、最新の矯正技術と丁寧なカウンセリングで、患者様一人ひとりに合わせた治療を提供しています。
ブラケットが外れた際の緊急対応も迅速で、定期的なメンテナンスにも力を入れています。安心して矯正治療を受けたい方は、ぜひ名駅大森ピア歯科・矯正歯科にご相談ください。